2010/11/05

【現代語訳】師説(「古文真宝」韓愈)

昔の学問をする者には、必ず先生がいた。
先生とは、人間の正しい在り方を伝え、技能を授け、疑問を解決するための人である。
人は生まれながらにして、それについて知らない。
だれが惑わずにおられるのか。いや、おられない。
迷っていながら、先生について学ぼうとしなければ、その迷いはいつまでも解けない。
私より前に生まれて、真理を聞いて理解することが、もちろん私より先ならば、私はその人につき従って先生とするであろう。
私より後に生まれても、真理を聞いて理解することが、また私よりも先であるならば、私はつき従って先生とするであろう。
私は道を先生とするのである。
そもそも、どうしてその人が先に生まれたか、後で生まれたかを考えるのか。いや、考えない。
こういうわけで、身分の高い低いの区別なく、年齢の高い低いの区別なく、道の存在するところが、先生の存在するところなのである。

ああ、先生について教えを受ける正しい在り方が伝わらなくなってから久しくなった。
人が迷いを無くそうとしても難しい。
昔の聖人は、人よりもはるかに抜きんでていた。
それでもなお、先生につき従って質問をした。
今の人々は、聖人よりはるかに劣っている。
それなのに先生について学ぶことを恥としている。
こういうわけで聖人はますます聖人となり、愚人は、ますます愚人となる。
聖人が聖人である理由、愚人が愚人である理由は、みなここに基づいているのであろう。

自分の子を可愛がり、先生を選んで教育させるが、自分のことになると先生について学ぶことを恥とする。
これは間違いである。
あの子供の先生というものは、子供に書物を与えてその書物の読み方を学ばせるものである。
私の言うところの、人の在り方を教え人の疑問を解決する者ではない。
文章の読み方を知らない者と、疑問を解決していない者、ある者は先生について教えを受け、ある者はそうしない。
小さいことは学んでも、大きなことは忘れているようなものである。
私はその人が賢明だとは思わない。

祈祷師と医者・音楽を演奏する人・各種の職人は、お互いに先生について学ぶことを恥じない。
官に仕える人達は師だとか弟子だとか言っている人に対して、群れ集まって笑う。
理由を問うと、「彼と彼とは年がだいたい同じくらいで、修めた学問も同じようなものだ。」
身分が低ければ、恥ずかしいことだと思い、位が高ければ、へつらっているようなものだと言う。
ああ、先生に師事して学ぶことが復活しないのが分かる。
祈祷師と医者・音楽を演奏する人・各種の職人たちを、知識階級の人たちは蔑んでいる。しかし今、知恵は、彼らに及ぶことができない。なんと不思議なことであるよ。

聖人には決まった先生はいない。
萇弘・師襄・老耼・郯子などの連中は、その賢さは孔子には及ばない。
孔子は「三人が行動すれば、必ずその中に自分の先生がいる。」と言った。
だから、弟子は必ずしも先生に及ばないというわけではない。
先生は必ずしも弟子より優れているというわけでもない。
道を聞くのに後先があり、技芸・技能に専門がある、ただそれだけのことである。

李氏の子の蟠は、十七歳である。
古典を好み、六経の本文と注釈を学んで、それらによく精通している。
この時代の風潮にこだわらず、私について学びたいと言ってきた。
私は彼が古人の師に仕える在り方を実行できることを立派だと褒め、「師説」を作って、彼に贈り物とする。

1 件のコメント:

  1. 学校の先生方は、教育という聖職をやってると思ってはいけない。
    先生は、一般サラリーマンと同じく営業を忘れてはいけない。

    生徒は、客であって弟子ではないのだ。これを勘違いしてはならない。

    昔は、先生職は、デモシカ先生と言われたように楽な職業であった。今は違う。教職は一般サラリーマンと同じく、客相手の職なのである。

    韓愈の師説を読んで、教職を聖職と思っては人生を誤まることになる。悲しいかな嗚呼



    栃木県教委は、生徒に体罰をしたとして、県南の中学校に勤務する男性教諭(50)を7日に
    戒告の懲戒処分にしたと発表した。

    発表によると、男性教諭は2012年11月、授業中に金属の棒で机をたたき続けた女子生徒を
    教科準備室に連れて行き、片手で突き飛ばしたほか、授業で使う指示棒や平手で頭を複数回
    たたいたり、太もものあたりを足で複数回軽く蹴ったりした。生徒にけがはなかった。

    教諭は「今後二度とこのようなことのないようにしたい」と反省しているという。

    今回の体罰は、文部科学省の通達を受けて児童生徒や教職員、保護者を対象に2~4月に実施した
    アンケート調査で把握した。調査では、12年度に県内で116件の体罰があったことが判明している。

    ソース
    読売新聞 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130508-OYT1T00049.htm?from=main7

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